[[ExperimentalParticlePhysics]]

**COMET 実験 [#b0182155]
 COMET (COherent Muon to Electron Transition) 実験は、ミューオンを使って新物理の発見を目指す国際共同実験です。J-PARC(大強度陽子加速器施設、茨城県東海)のパルスミューオンビームを利用し、ミューオンの稀な崩壊過程(ミューオン電子転換過程)を1京分の1の精度で探索します。九州大学素粒子実験研究室は本実験に参加しており、2017年ごろの第一期の実験開始に向けて研究を行っています。

*ミューオン電子転換過程 [#b0182155]
 素粒子物理の基本的な相互作用を記述した”標準理論”は多くの実験的事実に矛盾なく説明することができますが、一方でいまだに解決できない問題が残っています。これは私たちがまだ知り得ていない"標準理論を超えた物理"の存在を示唆しています。

 "標準理論"では世代ごとのレプトン数は反応の前後で保存します。(レプトン・フレーバー保存則)通常のミューオンの崩壊過程では電子と共にニュートリノが放出されるので、それぞれの世代におけるレプトン数は保存されます。COMET実験で探索するミューオン電子転換過程では原子核近傍のミューオンがニュートリノを放出せずに電子へと崩壊するため、それぞれの世代におけるレプトン数が反応の前後で異なります。そのため、ミューオン電子転換過程は"標準理論"において強く制限されます。(分岐比10^-54)しかし"標準理論を超えた物理"では、この限りではありません。現在考えられている多くの新しい理論が、観測可能な範囲(分岐比10^-16)でミューオン電子転換過程が起きると予言しています。つまりミューオン電子転換過程の実験的発見は"標準理論を超えた物理"の発見を意味します。