FASER(ForwArd Search ExpeRiment、フェイザー)実験は、これまでに発見されていない新粒子の探索や、高エネルギーニュートリノの観測を通して、素粒子と宇宙の謎に迫る実験です。2021年春、スイス・ジュネーブ近郊にある欧州原子核研究機関(CERN)に検出器を設置し、2022年に大型ハドロン衝突型加速器(LHC:Large Hadron Collider)のRun 3におけるデータ取得を開始しました。2026年にRun 3でのデータ取得を終え、現在、九州大学では取得したデータの解析と、2030年に開始予定のRun 4に向けた検出器のアップグレードに取り組んでいます。このページでは、FASER実験や九州大学グループにおける研究活動について紹介します。
FASERの大きな特徴は、LHCの陽子衝突点から約480 m離れたビーム軸上に設置されていることです。陽子衝突で生成される粒子の一部はビーム軸に沿った前方領域へ飛びますが、この領域は従来の大型検出器では測定が難しく、これまで十分に調べられてきませんでした。FASERは、前方へ集中する粒子を効率よく捉えるとともに、衝突点との間にあるLHCの磁石と約100 mの岩盤を利用して、多くの背景粒子を取り除きます。この独特な環境により、従来のLHC実験では捉えることが難かった軽く弱結合の新粒子の探索と、衝突型加速器で生成される高エネルギーニュートリノの観測を実現しています。